過払い金と法人税返還訴訟
消費者金融業界ではグレーゾーン金利の撤廃により過払い金の返還訴訟が生じておりますが、その当時に支払っていた法人税の取り扱いについて問題が生じているようです。
過去のグレーゾーン金利で得た利益の部分については無効とされ、現在は利用者への過払い金返還が生じているわけですので、過去の分の利益が無くなったといってもよいかと思われます。けれども、その利益の部分について過去に法人税として支払っていたわけですので、納めた税金についても返還されてもおかしくないように感じてしまいます。
当時、仮に年間1000億円程度の利益があったと仮定しますと、法人税を4割としましても、400億円程度の税金を納めていたはずです。けれども、現在ではその部分の利益が無効とされ、過払い金で返還している状況ですので、支払った400億円も返還されてもよさそうな感じは致します。(※あくまで仮の話ですので、正確な数字ではありません。)
実際、武富士は1997年4月~10年3月分で約4700億円の法人税を納めており、このうち2374億6470万6270円の法人税について還付を求める訴訟を国に対して起こしているようなのですが、平成26年5月2日付で最高裁判所に上告しているので、現在でも係争中のようです。
法人税額は事業年度ごとに確定するため、過去に遡ってというのは難しいようです。
ただ、全員が全員、過払い金の返還訴訟をしているわけではないかと思います。仮に2374億円が返ってきましても、過払い金が和解などで数百億円で済んだとすれば、残りは消費者金融会社の手元に入ることになるかと思われます。
この辺がよくわからないのですが、武富士は破綻した当時の潜在的な過払い金が2兆4000億円に上っていたとの試算もあったものの、実際に請求された未払い分では1700億円だったようですので、法人税が2374億円返ってきたとしても、この差額分はどういう扱いになるのか気になります。
武富士は既に破綻してしまいましたので、過払い金残高がこれ以上増えることはないとは思いますが、他の貸金業者の追従する形になれば、また複雑になってくると思います。
ただ、現状、消費者金融各社においては、引当金として損金として計上されていますので、これが一番、妥当ではないかなという気がしております。
過去に支払った法人税の分については、現在の費用として計上することで、法人税が安くなっているといえばおかしいですが、当時と現在で税率の違いはあるものの、だいたいの帳尻が合う形にはなっているはずです。
つまるところ、実際に過払い金で返還した金額が確定しないことには、当時の利益分も法人税も確定しないわけですので、確定して実際に支払った分については、現在の費用として認めますよということではなかなと思います。
また、法人税の還付は5年程度で時効になるのに対し、過払い金は継続性が認められると10年単位のケースもあるようですので、その都度、損金として計上する形が一番、妥当のような気がします。